オレオレ詐欺と富山地裁の訴状却下について(1)
20041201-01:17 コメント (5) トラックバックする
おれおれ詐欺の被害者が、だまされて振り込んだ現金を取り戻そうと、現金自動預払機(ATM)の振り込み控えに記された片仮名の名義人を相手に提訴したところ、富山地裁(剱持淳子裁判官)は27日までに「氏名や住所を特定していない」として審理入りせず退ける「訴状却下命令」を出した。地裁は被害者側の「地裁が職権で銀行に照会してほしい」との要請にも応じなかった。
とのこと。民事訴訟法及び民事訴訟規則に以下の様な規定があるため、富山地裁の対応は当然です。
民事訴訟法133条
1項
「訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。」
2項
「訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
1号
当事者及び法定代理人
(以下略)」民事訴訟規則2条
1項
「訴状、準備書面その他当事者又は代理人が裁判所に提出すべき書面には、次に掲げる事項を記載し、当事者又は代理人が記名押印するものとする。
1号
当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名及び住所
(以下略)」
ここで「当事者」とは原告・被告双方の事だと考えてください。誰が誰に対して訴えを起こしたのかがハッキリしていない限り、裁判所はそもそも相手をしてくれません。
何故かと言うと、少額訴訟における欠席裁判内の「手続保証と自己責任」で書いたことと被るので併せて読んで頂きたいのですが、被告が誰だか特定されていない訴えでは、当事者にバトルをさせることができないからです。
そんな無意味で不公正な裁判に税金をかける訳にはいきませんので、そもそも訴えが裁判所に係属しません(事件が裁判所で扱われている状態にならない、ということです)。
民事訴訟法137条
1項
「訴状が第133条第2項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。(以下略)」
2項
「前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。」
当事者が誰なのか特定されていない場合、裁判長はまず「誰が当事者かをハッキリさせないとバトルが出来ませんよ。ハッキリさせて下さい」と補正命令を出します。そしてハッキリさせられない限りは訴状を却下しなければなりません。これは裁判長の義務です。無意味で不公正な訴えの相手をしては税金の無駄だからです。この様に、無駄な訴えは形式的な判断だけで排除することによって他の重要な訴えに力を注ごうとしているんですね。
以上のことを今回の富山地裁の対応について見ると、訴状に被告として書かれていたのがATMの振込控えに記載されていたカタカナの名前。これだけではどこの誰なのかさっぱり分かりません。偽名かもしれません。こんな訴状では当事者同士のバトルなんか期待できませんので、結局は門前払いするしかないのです。
逆に、もしこんな訴えを認めてもその結果として得られる勝訴判決は前述の手続保障の観点から不公正な判決にしかなりません。それにどこの誰だか分からない相手に対する判決を貰ってもどうしようもないじゃないですか。
又、この記事の場合で裁判所が職権で銀行に個人情報を問い合わせるなんて真似がおいそれと認められたら大変です。オレオレ詐欺の場合、被害者が振り込んでしまったという控えはあるでしょう。しかし証拠らしい証拠はそれだけです。銀行の振込控えを裁判所に持っていけば誰でも口座の持ち主の個人情報を照会してもらえる…なんてことになりかねませんよ。
以上から、富山地裁の対応は至極真っ当なものだったとイシダは考えます。河北新報が「おれおれ救済、門前払い」なんていう裁判所叩きみたいな見出しを付けてるのはちょっとズレてますね。被害者の民事的救済に付いては警察との連携プレイで行くしか無いんじゃないでしょうか。犯人が分かればそいつを被告に特定できますし。
加筆:オレオレ詐欺と富山地裁の訴状却下について(2) で、やっぱり富山地裁の対応には問題があるんじゃなかろうかということ書きました。本件の原告代理人弁護士さんの文章を参考にしています。
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大爆笑。すごいなあ。匿名で悪口を書き逃げする姿勢。そしてこの読解力の無さと表現の下品さ。必死に正義ぶっているものの、オレオレ詐欺をやってる連中並の心の貧しさが滲み出てますな。ある意味、ゆとり教育の被害者なのかも・・・
実際に法律の実務家になったら、こんな電波な絡み方をしてくる人の相手もしなきゃならないんですよね・・・大変だなあ。
見当違いの非難をしてくる荒らしに対しても理路整然と答えてあげる優しいイシダさん萌えー。
いきなり攻撃的な文章を書かれていますが、イシダが加筆した部分”オレオレ詐欺と富山地裁の訴状却下について(2) ”までちゃんと読まれましたか?他人を批判するのであれば、自らも冷静になって他人の主張を理解しようとしないと単なる的外れな誹謗になりますよ。
”オレオレ詐欺と富山地裁の訴状却下について(1)”で書いたのは、富山地裁の判断も決して荒唐無稽なものではなく、形式的にはスジが通ったものだったということです。ただし、被害者救済と公平の見地から、本件の様な事情の下では、カタカナ名義でも実質的に当事者の特定があったとして例外的に訴えを適法なものと判断すべき…ということを加筆の方で書いています。落ち着いてちゃんと読んでください。
>現代の犯罪状況に見合ってない古い法律に固執し
法律家が法律の規定を無視して解決を図るなんてことは許されません。法律は国会、ひいては国民の意思の表れであり、それに基づいた判断を下すからこそその判断に一応の正当性が生まれるのです。法律の条文に根拠を求めつつ、解釈で妥当な結論を模索するのが法律家の仕事です。そして、カタカナ名義では一般的に被告の特定が認められないのが原則。この原則を疎かにしては法律家とは言えません。
>「警察との連携プレイ」で警察が加害者の特定を行えば済む、と簡単にいいますが、警察が行うのは口座の凍結までです。
貴方の主張によると、警察は犯人を検挙しないことになりますね。警察の仕事は口座の凍結だけなのでしょうか。それは余りにも非常識な考えです。
>このままプールされているお金をみすみす銀行のものにしなさい、と言っていることと同じですよね?
そんなことは一言も書いていませんが…。書いたのは民事訴訟における手続きについてであって、被害金額の帰属に付いてではありません。銀行も口座を凍結し警察の捜査も進んでいるのですから、なぜそれが銀行のものになるのですか?悪意あるこじ付けで悪口につなげようという姿勢では、まともな議論につながりませんよ。
>被害者の方に負があると言いだすだろう
これも悪意あるこじつけですね。非が有るのは当然加害者です。そして、被害者の救済も図られるべきです。但し、それは証拠に基づき適正な手続きの中でなされなければなりません。この点に於いて、富山地裁の判断は被害者に酷ではありましたが法律的にはスジが通っていた、と書いたのです。
しかし、名古屋高裁の判断はイシダが加筆部分で書いたものと同じでした。つまり、カタカナ名義での訴えは本来は×であるが、本件では▼被害金額が目の前の銀行口座にプールされており、訴えを認めることによってダイレクトに被害者の救済に繋がる▼銀行が弁護士による紹介に応じない等の事情がある▼訴訟になったあと、裁判所から銀行に対して問い合わせることによって口座名義人を明らかに特定できる…等の事情から、被害者救済及び手続的公平のために訴えを認めたのです。
逆に言えば、被害金が引き出されてしまっていたような場合には原則通りカタカナ名義での訴えは認められないことになります。そんな訴えを認めてもその口座には1円も残っておらず、何の救済にもなりませんから。
下手な法律論をかざすまでも無く一般論として、貴方が匿名でコメントされたことは感情的な誹謗に過ぎません。オレオレ詐欺が許せないという正義感には共感できますが、感情論と法律論を分けて考えてください。匿名で一方的に誹謗を書くことが人道的だとお考えならばそれでも結構ですが…。
貴方のような方がいるので、オレオレ詐欺の被害者は泣き寝入りを強いられているのだと思います
そもそもオレオレ詐欺の加害者は法律の穴を狙っていると自分達でも認めています
わざわざ法律の穴と言われている、現代の犯罪状況に見合ってない古い法律に固執し、被告がカタカナ名義なのに、判決を出しも仕様がない、というようなコメントを残される方が弁護士を目指していると思うと空恐ろしいです
「警察との連携プレイ」で警察が加害者の特定を行えば済む、と簡単にいいますが、警察が行うのは口座の凍結までです。
それ以上のおとは何があってもしてくれません。
警察も何もしない。
銀行にも凍結されていて、不振な点があり、凍結されてるにも関わらず口座主が何も言ってこない口座の名義人の名前すら教える義務はない。
それは、このままプールされているお金をみすみす銀行のものにしなさい、と言っていることと同じですよね?
自分が払ったという、証拠の用紙が存在し、その振込み先の口座は凍結されていて誰もそのお金を自分のものだと主張するものが出てこない。
明らかにそのお金の主は裁判まで起こそうとしている被害者のものではないでしょうか?
恐らく、下手な法律の知識をかざしては、被害者の方に負があると言いだすだろう相手に私も不毛なことを書いていますが、法律を司るものだkらこそ、人道的に判断ができる方であって欲しいというのが願いです