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都の「国籍条項」は合憲 最高裁大法廷が初判断(2)

ニュースとかネタとか

20050127-13:15 コメントする トラックバックする

 判決文も出たし各所で議論もされてるし、もう一度話題になってる部分を整理。

関連
 都の「国籍条項」は合憲 最高裁大法廷が初判断(1)

1.外国人の人権について

 日本国憲法第3章のタイトルが「国民の権利及び義務」となっていること等に目を付けて「外国人に日本国憲法の人権規定は適用されない」みたいなことを(ネタとして?)言ってる人が若干見受けられます。

 しかし、人権と言うのは御国に授けていただくものではありません。国家が有ろうと無かろうと、全ての人間が生まれながらに持っているものです。また日本国憲法は98条2項においていわゆる国際協調主義の立場を明らかにしており、「外国人には人権規定を適用しない」という様な立場を採っているものではないことが伺えます。

 よって、「国民の」という文言に拘ることなく外国人も人間である以上は当然に日本国憲法の人権規定の適用があります。

 ただし、全ての人権について日本国民と同程度の保障が及ぶというわけではありません。憲法上規定されている権利の性質として、外国人に日本国民と同程度の保障を及ぼす趣旨ではないと考えられるものについては制限を受けます。この事を判例(最大判昭53.10.4)は

憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき…

 と表現しているのです。

2.問題となっている外国人の人権

 ▼公務員就任権

 そもそも外国人には公務員就任権と言う人権は保障されないというのが原審。保障が及ばないとしながらも、非権力的な弱い管理職については外国人にも22条1項(職業選択の自由)や14条(法の下の平等)の保障が及び、これに反する国籍条項は違法としました。

 最高裁は判決理由に於いて

地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については,次のように解するのが相当である。

すなわち,公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。それゆえ,国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。

 とし、外国人には、公権力行使等地方公務員については就任権が保障されないことを明確にしました。

 ▼平等権

 不合理な差別をされない権利である平等権は、外国人にも当然保障されます。しかし合理的な区別は許されます。今回は、国籍条項が果たして合理的な区別か否かが問題になりました。

 管理職公務員となる権利が日本国民と同程度に保障されていないことが合理的な区別か否か。これについては、都の「国籍条項」は合憲 最高裁大法廷が初判断(1)でも書いた通り、国民主権原理から合理的な区別であるとイシダも考えます。

 原審は、管理職公務員となる権利が日本国民と同程度に保障されていないことは合理的な区別であるとしつつ、管理職と言ってもその仕事には色々あり、国民主権原理に必ずしも抵触しないものもあるのだから、一律に外国人お断りというのはいただけない…という判断。

 最高裁は判決理由に於いて

普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである。

そうすると,普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。そして,この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない。

当時,上告人においては,管理職に昇任した職員に終始特定の職種の職務内容だけを担当させるという任用管理を行っておらず,管理職に昇任すれば,いずれは公権力行使等地方公務員に就任することのあることが当然の前提とされていたということができるから,上告人は,公権力行使等地方公務員の職に当たる管理職のほか,これに関連する職を包含する一体的な管理職の任用制度を設けているということができる。

 そうすると,上告人において,上記の管理職の任用制度を適正に運営するために必要があると判断して,職員が管理職に昇任するための資格要件として当該職員が日本の国籍を有する職員であることを定めたとしても,合理的な理由に基づいて日本の国籍を有する職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではない。

 とし、国民主権原理からの合理的区別であり、平等権侵害ではないとしました。ただし、これは「東京都の管理職は全て国民主権原理に関わる仕事をするものであるから、一律の国籍条項も許される」としているのであって、日本のあらゆる地方公共団体の管理職について一律の国籍条項が許されるとしたものではないことに注意でしょう。

3.裁判官2名の反対意見がついていることについて

 これは、「知事や市長等については国民主権原理に抵触するのが明らかだとしても、管理職だからというだけで一律の制限はおかしいのではないか」「昇任試験の第一次選考から一律に国籍制限を設けなくても、他に方法があるのではないか」という意見であって、決して日本人と同程度の公務員就任権の保障を外国人に及ぼそうという意見ではありません。

 いわゆる「嫌韓」みたいな人たちがこの2名の裁判官を売国奴呼ばわりしたりしてますけども、そういう感情的で短絡的な反応をするのはいかがなもんでしょう。

 イシダとしても、本当に東京都の管理職が一律に国民主権原理に関わる仕事をするものかどうかは疑問ですし、ちょっと乱暴な理由付けによる判決かな、とは思います。

4.判決後の記者会見について

 これにはさすがに呆れました。どうやったらあそこまで話を飛躍させて日本の悪口に繋げることができるんでしょうか。

 今回の判決は、▼東京都の▼管理職公務員についてのものであって、日本という国が外国人の就業を一般的に差別するというものではありません。

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