(4)支払督促と証明責任
20050120-15:50 コメントする トラックバックする
支払督促とは、金を払って欲しがっている人の一方的な申立てにより、形式的な審理だけで裁判所書記官が相手方への督促状を発する手続です。
例えば、前述の例の様にAさんがBさんに2000円貸してたとします。現実には2000円程度でこんな真似しないでしょうけど、Aさんが簡易裁判所の書記官に支払督促の申立てをすると、ごく簡単な審理ですぐに督促状が発せられます。Bさんのもとにはいきなり「はやくAに2000円払え」みたいな督促状が届くことになるのです。
でもこれだと前のページで書いた手続保証もクソも無い様に見えますね。そこでBさんにもちゃんと争う機会を与えるために、督促異議という制度が設けられています。
督促状に「はやくAに20000円払え」とか書いてあった場合にはビックリじゃないですか。又「既に2000円返していたのに」って場合もあるでしょう。そんな時には「おいおいちょっとおかしいぞ」と異議を申し立てることが出来、その結果として通常の訴訟手続に入ることになります。ここでお互いに精一杯のバトルをさせようってことですね。
支払督促という制度の趣旨は以下の通り。すなわち、相手方へ強制執行をするのに常に判決が必要とすると一々裁判やるのがかったるいので、迅速に「金払え」と言う為の手続としてこの制度が設けられているのです。少額訴訟すらかったるいって感じなんでしょうか。先に督促状だけ急ぎで発しておいて手続保証は後からね、みたいな。
さて、それを踏まえた上でイシダにかかってきた電話の内容をご紹介。
「サイト業者からの委託を受けて支払い意思の確認のお電話をしております。そちら様のお電話はボーダフォンで、番号は090-XXXX-XXXXですね。」
どこで小知恵を付けたのか、最近は「債権を譲渡されました」とは言わないパターンが増えてきてます。イシダも「債権の譲渡を受けた訳ではないのですね?」と確認したら「はい」と言われましたYO。
トキメキだかドキドキだかそんな感じの頭悪そうなサイトのポイント料金が未納なんですって!あらやだコワーイ。威圧的な女性の声で払うのか払わないのかと迫るんですよ。適当にあしらってたら話が急展開。
「支払の意思は無いということですね。では裁判所を通じて支払督促…」
どこで勉強したのやら、頑張って支払い督促の話題を持ち出してきました。これ、法律にあまり触れたことが無い人があの口調で言われたらかなり不安を煽られるんじゃないかと思います。イシダもドキドキものでしたし…。
しかしここで引き下がるのも癪なのでもう少したてついてみる勇気。「支払督促が来たら督促異議申立てするんでどうぞー」とか言ってみたですよ。どう返してくれたかと言うと
「その場合、通常訴訟に移行してお客様が料金の不存在を立証することになりますが」
んぶ。思わず笑っちゃいました。通常訴訟に移行するのは合ってますけど後半が頭悪すぎです。だってこの理屈って↓と同じですよ?

それっぽい法律用語を使って電話してきてるものの、落ち着いて考えればジャイアン以下。「そちらに有利な事についての証明責任はそちらにありますから、この場合はそちらでポイント料金が存在することを証明しないと訴えが棄却されちゃいますよ?」とアドバイスしてあげる心の狭いイシダ。
「とにかく、支払督促をお送りしますので」(プツッ)
切られた。つまんないの。この電話が来たのは2004年の2月ですけど、11月になっても支払督促なんて来ませんね。そりゃ当たり前です。向こうはイシダの住所すら知らないため、管轄の簡易裁判所も分からないんですから。
イシダの場合はこんな電話で済みましたけど、簡易裁判所からの支払督促が来た場合は放置してはいけません。異議申立期間(2週間)を過ぎると支払督促は確定判決と同一の効力を持つ事になるため、酷いことになります。
このページのまとめ
▼電話で法律用語や裁判所の話を並べられても慌てる必要はありません。わざわざ分かりにくい用語を使ってくるのは相手を混乱させるためです。まともな法律関係者なら分かり易く説明してくるはずです。
▼支払督促をスルーしてはいけません。
その他、架空請求の頭の悪さを垣間見たい方は次のページへ。
(1)架空請求のどこが頭悪いか
(2)指名債権譲渡の対抗要件
(3)少額訴訟における欠席裁判
(4)支払督促と証明責任
(5)架空請求の添削1
(6)架空請求の添削2、3
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