奈良の事件の逮捕のやり方について
20050121-12:16 コメントする トラックバックする
初めまして、こんばんわ。 今テレビを見ていたんですが、奈良の少女殺害事件の容疑者は現在誘拐の容疑で逮捕されていて、その拘留期限が19日に切れるので、その後は殺人及び死体遺棄の容疑で再逮捕する、とニュースで言っていました。 これって容疑者の拘留期限を不当に長くするため、適切ではないってことにはならないんでしょうか?
再逮捕の問題と言うより、一罪一逮捕一勾留の原則からの問題ですね。
刑事訴訟は国家の刑罰権実現の手段であるところ、実体法上一罪とされるものに対しては国家の刑罰権は1つしか発生しないため、訴訟上も1個の手続きによるべき。それゆえ「一罪」についての身体拘束は1回とするのが原則です。
まず誘拐罪と殺人罪とについては客観的類型的に牽連関係が認められるとは言えず、併合罪関係に立つものと解されます。よって「一罪」ではありません。次に誘拐罪と死体遺棄罪とについても併合罪の関係に立ち、「一罪」ではありません。
とすると、そもそも今回の逮捕は別罪の逮捕として適切だと言えます。
確かに一連の事件について逮捕を小出しに行っているようにも見えますけれど、もし一連の事件全てについての捜査を1回の逮捕勾留手続内で行おうとすれば捜査が粗くなって真実発見に反するでしょうし、毎日極めて長時間の取調べが続けられることになり返って被疑者の人権保障にも反しかねません。それよりは、別事件として各容疑にウェイトを置いた捜査を行うと共に、被疑者の防御の範囲にもメリハリを付けた方が良いように思います(もちろん、関連する他の容疑についての取調べも並行して行われるでしょうが、だからと言って違法な別件逮捕となるほどの事例だとも思えません)。
尚、「再逮捕」とは同一の被疑事実に付いて逮捕を繰り返すことを言い、既に逮捕されている人を別の被疑事実で逮捕することではありません。その意味でニュースの表現は不正確でしょう。
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