都の「国籍条項」は合憲 最高裁大法廷が初判断(1)
20050126-16:45 コメントする トラックバックする
NHKの速報を見た時には思わず声を上げちゃいましたYO。
外国人の公務就任権問題とは、簡単にまとめると以下の様な事です。
まず外国人も人間である以上は当然に人権享有主体であり、権利の性質上日本国民のみがその対象とされているものを除いて、日本国憲法上の人権規定の適用があります。
もともと人権の保障には国籍なんか関係ないんだから、思想・良心の自由や奴隷的拘束の禁止等について日本国民と同程度の保障が及ぶのは当然である反面、参政権なんかについては国民主権原理から外国人と日本人とが同程度の保障をされているとは言えない…ってことです。
国民主権原理とは、自国の進むべき道を(君主ではなく一般の)国民が決定するという原理です。そして自国の進むべき道の決定過程に国民以外の意思が好き放題介在しては、もはや国民主権とは言えませんよね。それゆえ、公の意思形成や権力の行使等、自国民がその内容を決すべき事柄に関する人権に付いては、その性質上外国人が日本の国民と同程度までに保障されているとは言えないのです。
そして、公務員は行政サービスの担い手であり、その地位によっては公の意思決定に深く関わったり国民に強い影響を及ぼす権力を行使したりする職業です。それゆえ、外国人に日本人と同様の公務員就任権を保障することには問題があると言うことになるのです(例えば、国会議員や裁判官、警察官等)。
ただ、人権の制限はいつでも最小限であるべき。国籍条項(受験資格に「日本国民であること」を入れること)は外国人の職業選択の自由を制限するものですし、不必要な制限であった場合は不合理な差別的取扱いとして平等権侵害にもなります。
そこで、「公務員関係は外国人お断り」とかいう大雑把なくくりで制限するのではなく、どの程度の制限ならば最小限のものとして是認できるのか個別に判断していかなければなりません。
上記の国民主権原理からの制限という趣旨からすると、公の意思決定に深く関わったり国民に強い影響を及ぼす権力を行使したりしない公務について外国人を登用してもOKってことになりますよね。なので、例えば海外の公務経験者や専門技術者をアドバイザーみたいな感じで採用するのは当然アリでしょうし、非管理職のお役人になることも普通は許されるべきでしょう。こんな部分まで「ガイジンだから」と門前払いしたら、ただの人種差別です。
では管理職はどうか。ヒラのお役人とは違い、そこそこの行政サービスを統括して我々国民に影響を与えてきそうです。それゆえ問題となるのです。
今回の判決の前審(東京高判平9.11.26)は
被控訴人の管理職としては、前記のとおり、東京都事案決定規程…により知事の権限に属する事務に係る事案の決定権限を有する知事又は出納長若しくは局長、部長若しくは課長のほかに、直接には事案の決定権限を有しないが、事案の決定過程に関与する次長、技監、理事(局長級)、参事(部長級)、副参事(課長級)等、さらには、計画の企画や専門分野の研究を行うなどのスタッフとして職務を行い、事案の決定権限を有せず、事案の決定過程に関わる蓋然性も少ない管理職も若干存在している。…
この者たちが事案の決定過程に関与するといっても、その関わり方及び関わりの程度は、広狭・強弱様々であるから、外国人の管理職任用について前述したように、被控訴人の管理職についても、一律にすべて外国人の管理職への任用(昇任)を認めないとするのは相当でなく、その職務の内容、権限と事案の決定との関わり方及びその程度によって、外国人を任用することが許されない管理職とそれが許される管理職とを区別して任用管理を行う必要があるというべきである。
とし、「管理職だから」と一律に外国人を排除するのはやっぱりダメで、管理職ごとにその公務の強弱を個別に判断して、国民主権原理と抵触しないような管理職については外国人の就任も認めるべき…という判決を出しました。
今回の最高裁判決はこの高裁判決を引っくり返したもので、見出しだけ見ると「えー!外国人は管理職になれないのー!?」という感じがするかもしれません。
でもさっきテレビで判決理由を見たら、「東京都の管理職は公の意思決定に深く関わったり国民に強い影響を及ぼす権力を行使したりするものしかないので、その受験資格に国籍条項を設けてもそれは国民主権原理からの最小限の制限だ」みたいな言い方してました。なので最高裁も決して「単に管理職だから」と蹴飛ばした訳ではないんですね。
まあ、理由としては大雑把な感じがありましたが。尚、2名の裁判官が「かかる国籍条項は違憲だ」との反対意見を述べています。
うーん、重要判例が出てしまった。
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