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(9)一事不再理

危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪

20050120-15:01 コメントする トラックバックする

 「危険運転致死罪の訴因で頑張ったばっかりに、無罪判決が確定しちゃった。ああ、こんなことなら最初から業務上過失致死罪の訴因で起訴していた方が被害者側の立場に沿うものだったなぁ…ん?じゃあもう一度あの事故について最初から業務上過失致死の訴因で訴えてみよう! 」

 こんな真似が許されないのはお分かりですね。社会的に同一である事件について、検察官が納得するまで訴因を色々変えて起訴されたんじゃ被告人が大変すぎます。もともと検察官は強大なパワーを持っていると書きました。一発で裁判を終わらせるだけのパワーを持っているのですから、一発で終わらせなければなりません。相対的に力の弱い被告人を何度も刑事訴訟につき合わさせることは許されないのです。

日本国憲法39条

(遡求処罰の禁止・二重処罰の禁止)

 「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」

刑事訴訟法337条

(免訴の言渡し)

 「左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。

 1号
 確定判決を経たとき」

 憲法にわざわざ規定があるということは、かつてはこの起訴し直しが濫用されていたということなのでしょう。こんな形での国の暴走を防ぐために、適正手続条項の1つとして39条があるのです。また、これを受けて刑事訴訟法は337条1号を置き、一度確定判決を受けた事件については、再度の実体審理を許さずにとっとと訴訟を終わらせる(有罪・無罪の判断すら行わない)と規定しているのです。

 社会的に同一である事件に付いては、検察官に訴因変更の権限が認められていましたよね。訴因変更によってズレを修正し、裁判官に有罪の判断をさせるチャンスが検察官にはあったのです。それだけの権限を持っていたのだから、結果に納得いかないからといって社会的に同一である事件を訴因を変えて訴え直すことはズルだと考えるのです。国側と被告人側のパワーバランスの調整と言ってもいいでしょう。

 オチとして、当該交通事故については無罪が確定し、しかももう刑事責任を問うことは許されなくなるのです。

なぜ検察官は業過死傷で起訴するのか

 ここまで読まれた方はもうお分かりですね。検察官が交通事故の被疑者を業務上過失致死傷罪で起訴するとき、「軽く処罰するだけで充分だ」等とは思っていないのです。刑事訴訟のプロとして裁判官を納得させるに足る証拠の有無は起訴前にある程度判断できますから、その後を見越して、危険運転致死傷罪の立証が難しい場合には最初から業務上過失致死傷罪の訴因で起訴しているのだということ。無罪判決を貰ってそれが動かせなくなるよりも、被告人に最も相応しい有罪判決を貰うべきだからです。

 そして、業務上過失致死傷罪の法定刑は決して軽いものではありません。むしろ過失犯の中ではブッチギリで重いものでした。被告人に対する非難の程度に相応しい刑がきちんと予定されているのです。

 ただ、いくらここで「相応しい刑」と言ったとしてもそれが被害者・御遺族の側から見ればどうなのか、被告人の側から見ればどうなのか、この間には非常に大きな隔たりがあるということは否めませんが…。

 検察官には強大なパワーが与えられている分、その責任も重いものです。被告人よりも現実的に有利な立場にある以上、自らのミスを被告人に被らせることは許されません。ミスを避け被害者側の心情に配慮し刑事訴訟の早期終結を目指して最短ルートの行動を取ることが、結果として被害者側の心情に沿わない行動と映ってしまうことがある…そーいうことをこのスペースで言ってみたかった。

 そんな意味が少しでも伝われば幸い。こんなところまで延々と読んでくれてありがとう御座いました。

(1)危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪
(2)故意犯と過失犯
(3)結果的加重犯
(4)刑事訴訟と適正手続
(5)審判対象=訴因
(6)訴因変更
(7)一審の判決
(8)上訴審の役割
(9)一事不再理

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