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事後強盗罪について

ニュースとかネタとか

20050817-22:34 コメント (7) トラックバックする

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/46bd83a89d458dbe4925705f0017a8bc?OpenDocument

 神戸地裁判決。加えられた暴行の程度が被害者の反抗を抑圧するに足りないものだったという結論を導く理由付けが分かり易くて面白かったです。あと、検面調書(乙4、乙5)って強いんだなー、と。

 万引きがバレた際に逮捕を免れるべく被害者に暴行を加えた場合、その程度が強盗罪一般における「暴行」つまり「相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の有形力の行使」に至ると事後強盗罪となります。

刑法238条

 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

 これは、相手をボコって反抗を抑圧してからから財物を奪うことと財物を奪ってから相手をボコって反抗を抑圧することとは大して変わらないじゃないか…という規定。万引きは「窃盗」ですから、これに着手した者が「財物を得てこれを取り返されることを防」ぐために、又は「逮捕を免れ」るために、又は「罪跡を隠滅する」ために暴行・脅迫を加えた場合には事後強盗罪にストライク。

 そして「強盗として論」じられてしまう以上は、その暴行・脅迫の機会に相手にケガを負わせてしまうと強盗致傷罪にストライク。

刑法240条

(事後強盗)

 強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

 窃盗罪の法定刑は1月~10年の懲役なのに、強盗致傷罪だと最低でも6年の懲役ということになります(酌量減軽があれば別ですが)。これを避けるため、プロのスリは電車内で捜査員に現場を押さえられた場合には、(常習累犯)窃盗で済ませるためにもう抵抗しないそうな。

 判決文の最後のほうを見ると、検察側の求刑は懲役6年。強盗致傷罪の枠内で一番軽い求刑だったんですね。これはおそらく強盗としては被害額が少なかったことや被告人の反省の情等を勘案したからだと思います。

刑法12条

(懲役)

1項

 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。

刑法14条

(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)

2項

 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては30年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては1月未満に下げることができる。

刑法47条

(有期の懲役及び禁錮の加重)

 併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

刑法204条

(傷害)

 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 判決では窃盗罪と傷害罪の併合罪としていますので、裁判所が下せる有期懲役の枠は1月~22年6月。無期懲役が無いものの殆ど強盗致傷罪並の処断刑ですね…。もちろん、判決では事案に相応しい量刑となっていますが。

 それにしても、刑法も随分変わりましたねぇ。強盗致傷罪の法定刑が7年から6年になったり、傷害罪の法定刑が10年から15年になったり。うっかりしてると間違えそうだ。

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"事後強盗罪について" へのコメント

「犯行を抑圧するに足りる脅迫だったか否か」という判断は、加害者と被害者がどんな感じの人間だったか等の事情を鑑みて「この程度の脅迫をされたら、そりゃあ被害者はもう反抗できなくなっちゃっただろうな」と言えるか否かによります。
 
この判断は基本的に一般人の見地からなされますので、例えば被害者が特に恐がりでちょっとした脅迫でも身動き出来なくなってしまうような人だったという特殊な事情があり、加害者が(一般人の見地から加害者と被害者の関係を見れば)ほんのりとした脅迫を加えたら被害者が極度に恐怖して反抗を抑圧されてしまった…なんて場合には、一般的見地から「反抗を抑圧するに足りる脅迫」が加えられたとは言えませんので強盗罪の実行行為とは言えません。
 
つまり、反抗抑圧という結果から判断するのではなく、一般的見地から「強盗罪と評価できる危険な脅迫行為が有ったか」の判断を行うのであり、その際に加害者被害者間の具体的事情を考慮するということです。
 
ひかわさんは刑法の勉強をされている方でしょうか。もしそうだとしたら不能犯のお話(どの様な行為が危険な行為として犯罪の実行行為となるか、の危険性判断)を思い出していただきたいのです。一般人が見て「危ない!」と思う行為は禁圧する必要がありますから、たとえ結果発生の客観的可能性が無くても実行行為性アリとして未遂犯が成立しますよね(例:殺すつもりで、致死量に至らない毒薬を飲ませる行為)。強盗罪における「反抗を抑圧するに足りる暴行脅迫の有無」の判断もこれとパラレルなのです。つまり一般人が「それじゃ被害者は反抗できなくなるよ」と感じる暴行・脅迫は強盗罪により禁圧すべき…ということになりますよね。
 
そして不能犯の論点における具体的危険説の考えからは、ひかわさんが疑問に思っておられる「反抗を抑圧しない程度の脅迫+被害者が反抗抑圧状態」の場合、加害者が「この被害者はビビりやすく、ちょっと脅せばすぐに反抗できなくなる」という事情を知って軽い脅迫行為に及んだ場合には強盗罪としての実行行為性が肯定され、財物を奪っていれば強盗既遂になります。一方でかかる特殊な事情を加害者が知らなかった場合にはそもそも強盗罪の実行行為と言うに足りる危険な行為は無く、恐喝罪となるでしょう。
 
勝手に「刑法の勉強をされている方」と思い込んで随分端折った書き方をしてしまいましたが、伝わりましたでしょうか?

  •   イシダ
  • 2005年08月21日 17:56

挨拶していませんでした;
初めまして、ひかわデス。 いつも楽しく拝見させていただいてます。

なるほどなるほど。 つまり犯人が財物を得て、その手段が
反抗を抑圧するに足りる脅迫+被害者が反抗抑圧状態=強盗既遂
反抗を抑圧するに足りる脅迫+被害者は反抗抑圧状態にない=強盗未遂
反抗を抑圧しない程度の脅迫+被害者は反抗抑圧状態にない=恐喝
ということですね。

「反抗を抑圧するに足りる脅迫」があればその時点で強盗
実際に被害者が反抗抑圧状態にあったか無かったかは、既遂未遂を分けるんだぞと

…そーすると、
反抗を抑圧しない程度の脅迫+被害者が反抗抑圧状態
の場合はどうなるんでしょう?
「具体的事情に鑑みて」とのことですから、そもそも被害者が反抗抑圧状態にあれば、反抗を抑圧する程度の脅迫があったということになるんでしょうか?

>ひかわさん
強盗するつもりで犯行を抑圧するに足りる脅迫を加えたのに相手は犯行抑圧状態に陥らず、でもまあ怪我するのもヤだしめんどいしってなもんで自分の意思でCDを渡しちゃった場合は、多数説からは強盗未遂罪になります。これは、犯行抑圧状態の作出が強盗罪の本質であると考えるためですね。
 
また、加えられた脅迫が犯行を抑圧するに足りないものであった場合には恐喝罪になるでしょう。
 
イシダが読む限りですと、ベーさんが想定している事案は、CDショップやコンビニなんかでバイト中にCD1枚を万引きしているアホを発見して声をかけたら抵抗された…っていうものだと思います。そして、被害額の小ささを考えると店員も強硬に抵抗はしないだろうし、その様な店員の犯行を抑圧したからって強盗罪になっちゃうのはバランスとしてどうなのか?と。
 
ここで考えなければいけないのは、強盗罪というのはやっぱり相手方の犯行を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えるものであるが故に重く処罰されているのだ、ということです。被害額がどうあれ、財産目的で加えられる暴行・脅迫というのは、単なる喧嘩の際の暴行・脅迫とは危険度が違うはずです。この、財産犯+暴行・脅迫という点が重要なのではないか、と考えられるのです。
 
そうだとすると、たとえ被害金額が少ない万引きの場合であろうとも、かかる万引き行為に及んだ者が被害者の抵抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた以上は、やはり強盗罪と同様の犯罪を犯していると判断すべきでしょう。
 
強盗罪となるか否かの分かれ目は、やはり「犯行を抑圧するに足る暴行・脅迫を加えたといえるか」「その結果として被害者の犯行が抑圧され、加害者は財産犯としてシメシメと思ったか」です。先にもコメントしたとおり、判決が被害金額を量刑の部分でしか考慮していないのも、この考え方の表れだと思います。
 
実際に「ちょっとビビらせる」程度の暴行・脅迫が加えられたに過ぎない場合は、窃盗罪+暴行罪or脅迫罪の併合罪になるんでしょうね。
 
…事後恐喝っていう犯罪類型がないからこんな話になるんでしょうか。

  •   イシダ
  • 2005年08月20日 21:30

>べーさん
事後強盗罪は、「窃盗が」と規定されている通り窃盗を行った者しかなしえない犯罪類型です。そしてここに言う「窃盗」とは盗みを完了した者のみならず盗みという行為に着手しただけの者もふくまれます。なので、着手はしたものの盗みを達成する前に発見されて逮捕を免れるために暴行・脅迫を加えてしまう…というパターンもあるので、必ずしも「盗られた物が分ってる」とは言えませんね。
 
それはともかく、べーさんはとてもいい疑問を持たれていると思います。犯行を抑圧するに足りる暴行・脅迫が加えられたか否かの判断は、まさに具体的事情に鑑みてバランスよく判断しなければなりません。実は今回紹介した判決は、ズバリ「犯行を抑圧するに足りる暴行と言えるかどうか」が問題となっているのです。
 
べーさんの言われるバランスについて、今回の判決では、被害者と加害者の体格差や被害者の万引き対応の経験の有無、他の証拠から明らかになった加害者側の暴行の程度等を踏まえた上で、「以上の諸点を総合勘案すると,被告人の暴行は,被害者の反抗を抑圧するに足りる程度に至っていたとは認め難いから,被告人を強盗致傷罪に問うことはできないというべきである。」という判断をしています。ここいらへんの事情をベースにしてバランス調整を図っているんですね。
 
ちなみに、被害金額については暴行の程度には直接関係しないものですから、量刑のところで考慮されています。

  •   イシダ
  • 2005年08月20日 21:07

って、自分からCD渡してる訳じゃないんですね。
えーと、そーすると窃盗と暴行の併合罪かな?
イシダさん、どうでしょう??

横やり失礼
反抗を抑圧する程度 ってーのは、反抗をできなくするってことだと思います。
強面調のお兄さんに 「CDよこせやー」 とすごまれ、怪我したくないからCD渡しちゃっても、強盗じゃなく恐喝かと。

  •   ひかわ
  • 2005年08月19日 01:32

事後強盗って事は、盗られた物が分ってるんですよね。
レジの数十万円を守るためだったら、多少の怪我を覚悟で抵抗しますけど、CD1枚だとそこまではしませんよね。ちょっとビビらされたら抵抗をやめそうです。
大した事ない万引だったら、反抗のレベルも低い訳で、それを抑圧しただけで強盗というのもあんまりな気がします。
このあたりのバランスはどこで調整するようになってるんでしょう?

  •   べー
  • 2005年08月18日 01:48

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