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憲法の意味と役割

簡単な憲法

20050821-20:48 コメント (2) トラックバック (1)
「憲法」というもののイメージ

 このスペース以下でお話していく「憲法」とは、「国家権力を制限し、我々個人の権利自由を守るための法」という意味です。

 よく「憲法と法律は違うの?」といった質問を受けます。答えは「違う」です。法律とは国会が作るルールのことで、主に国民一般を規律する内容のものです。憲法とは我々国民が権力を縛るために作るルールのことで、主に権力を規律する内容のものです。

 現代日本の様な国に住んでいれば当たり前の感覚ですが、我々は他人とは違うマニアックな趣味を持ったり自分なりの考えを公に吐いたり出来ますよね。しかし歴史的に見ればこんな好き放題できるような状態は稀で、大抵はどこかから「そんなことするな」という余計な干渉が加えられてきました。ガリレオだって教会から「地動説とか言うな」っていじめられましたし、戦前の日本でもお国に都合の悪い学説を持つ国立大教授は首が飛びましたし、現代でも例えば中国における一部のサイト閲覧禁止なんて話も耳にしたことがあるでしょう。何かしらの権威・権力を持つ連中からの過度の干渉によって自分の好きなことができない…という状態では、我々はなんだか1人の人間として扱われていないんじゃないか?という疑問すら湧いてきます。

 ヨーロッパにおける市民革命前は、一部の特権的身分を持つ人たちに都合のいい様に社会が作られていました。一般人は国王やら領主様やら教会やらに色々と口出しされる窮屈な生活を送っていたのです。それにキレた市民が権力からの過度の干渉を排除した自由な社会を作ることを目指して立ち上がったのが市民革命でした。そして、古い身分社会を壊した市民たちは考えます。今までは特権階級が強大な権力を持って世の中を動かしてきたけれど、これからは具体的にどうすべきなんだろうか、と。ここでロックの思想が大きな力を発揮しました。

1
 人間は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利(生命・自由・財産)を持っている。

2
 この生来の権利をより確実にするために市民は相互に社会契約を結び、政府を作ってそこに権力の行使を委任する。

3
 政府が権力を好き放題行使して市民の権利を不当に侵害してきた場合には、市民は政府に抵抗する権利を有する

 我々は特権階級に許されて生きているのではなく、生まれながらにして自由であり権利を持っている。身分による支配ではなく、平等な個人個人が作る社会が必要なのだ…という考え方です。そして個人が集合して社会を形作るとき、1人1人が持っているパワーを少しずつ出し合って1つの大きなパワーの塊を作ります。イメージとしては元気玉に近いもの。こうして出来上がった大きなパワーを使えば、例えば個人では作るのが大変な大規模な道路や橋を作ったり、犯罪を取締る大規模な組織を作ったり出来るようになります。このパワーの塊が権力であり、その塊を上手に使って市民にサービスを施せば、我々が有する生来の権利の確保が強力に図られる事になります。このパワーの塊はそれ単体では何も出来ませんから、だれかパワーの塊を上手に使える人達を選んで市民へのサービスを任せることになります。これが政府です。

 パワーの塊(=権力)は、放っておくと必ず暴走します。これは歴史を見れば明らかですね。革命後の市民たちは権力の暴走に迷惑してきた人達ですから、何とかして権力の暴走を防ごうと考えました。せっかく自分たちがパワーを出し合って作り上げた塊が自分たちをイジメル方向に動き出したらたまったもんじゃないからです。その為にパワーの塊に檻を被せ、何重にも鎖で巻きました。必要なサービス以外は出来ないように権力を縛り暴走を防ぐ為の拘束具。これが憲法なのです。

日本国憲法99条

 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 憲法によって縛られるのは天皇・摂政・公務員であって、国民ではありません。国民は縛る側なんですから当たり前ですね。

 (コメントの方で御指摘を受けました通り、ドイツ憲法では「国民は反民主的な政党を作ってはならない」という様な形で国民を縛る規定が存在します。これはナチスドイツ下の苦い経験を踏まえてのもので、あるべき憲法秩序を破壊するような価値観を否定し正しい民主制を堅持しようという考えの現れです。一方、日本国憲法にはその様な規定は存在しません。これは、たとえどんなに反民主的な意見であれ、それを政党を通じてアピールすることを禁じたりはせず、我々の議論・討論を通じて解決されていくべきだというスタンスを取っているからです。どんな意見にもとりあえず等しく価値を認めようという価値相対主義の現れと言えるでしょう)

憲法の特質

 以上の様なイメージをもとにすると、憲法には大きな3つの特質があるということになります。

1. 自由の基礎法であること

 憲法は、何よりも我々が余計な干渉を受けずに自由に生活するために存在します。憲法には大雑把に分けると人権について規定してある部分と国家組織について規定してある部分がありますが、重要なのは個人の自由を中心とした人権規定の部分であり、国家組織について考える際にもどうすれば国家が個人の自由に奉仕できるかという観点から考えなくてはなりません。

 権力による過度の干渉がある世の中では「我々はなんだか1人の人間として扱われていないんじゃないか?」という疑問が湧いてくる…と上の方で書きました。自由が不当に制限された世の中では、我々は個人の尊厳を全うできません。「自由」という考え方は「個人の尊厳」という考え方に深くつながるものであり、憲法はその自由を守るための基礎となる法なのです。

2. 制限規範であること

 憲法が権力による余計な干渉を防ぐ為のものであるということは、権力を制限するための規範であるということです。権力とは我々国民が少しずつ出し合ったパワーの塊なんですから、それを制限することができるのは権力の行使者である公務員ではなく我々国民ですね。

 また、憲法による縛り方次第で国の政治の方向性が決まるとも言えますから、憲法が制限規範であるということは国のあり方を決める権利が国民にあること=国民主権という考え方にもつながります。

3. 最高法規であること

 憲法は、我々をあらゆる権力による不当な干渉から守るためのもの。ということは、国の中に憲法よりも力の強い法規範が有ってはならないということです。憲法がピラミッドの最高部に座ってあらゆる権力・権威に睨みを効かせ、我々に対する不当な干渉があればすぐにダメ出しをしてくれることが必要なのです。

 第10章「最高法規」に規定されている条文は以下の3条。

日本国憲法97条

 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

日本国憲法98条

1項

 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2項

 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

日本国憲法99条

 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 我々の基本的人権を不当な干渉から守り自由を確保するために憲法が有り(97条)、そうであるが故に憲法は最高法規であり(98条)、かかる最高法規は権力の側にいるものを拘束する(99条)…という流れで構成されています。この考え方は憲法の様々な規定を解釈していく上でとても重要になります。

法の支配

 今まで見てきた憲法の考え方は、法の支配という原理と密接に関連します。法の支配とは、専断的な「人の支配」を排除して権力を法で縛り、それをもって国民の権利・自由を守ることを目的とする原理のことです。この中で特に重要とされるのは、

1. 憲法の最高法規性の観念

2. 権力によって侵されない個人の人権

3. 適正手続の保障

4. 裁判所の役割の尊重

 の4点。1については前述の最高法規性からのものですし、2についても権力による余計な干渉を排除し我々の自由の領域を確保するための人権規定ということですから、今まで見てきたことから導けます。3の適正手続の保障については、例えばお巡りさんの逮捕行為の様なものをイメージしてみて下さい。一定の場合には我々は逮捕されちゃうことがありますが、その際にもしかるべき手続を踏むことが要求されていますね(逮捕状の呈示とか)。我々の権利・自由を守るにはマトモな内容を持った法が必要であることは当然として、さらにマトモな手続を踏んでもらわなければ困る…ということです。公権力を手続の面でも縛り、暴走を防ぐという意味合いだと思って下さい。最後に4。これだけ知恵を絞って制限を加えても、権力が我々国民に不当な干渉をしてくることは生じます。その場合にどうするか。不当な干渉を排除し受けた損害を回復させてくれなきゃ意味が無いですね。その役割を担うのが裁判所だということです。

 以上の4点は日本港憲法の中にも現れているので(1につき第10章、2につき第3章、3につき31条、4につき81条)、日本国憲法は法の支配の原理を採用しているものと考えられます。

憲法の意味と役割

 まとめると、憲法とは「権力を縛って暴走を防ぐ為の最高法規」であり、その役割は「我々国民の権利自由が不当な干渉を受けないようにすること」です。このことをスタートラインに、憲法に付いての簡単なオハナシを書いていきます。

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"憲法の意味と役割" へのコメント

貴重なご意見ありがとうございます。自分では簡単に書いているつもりでも、ついつい一般的にはなじみのない言葉を使ってしまうものなんですね。
 
憲法の文章の続きを書く前にこのエントリーを修正してみますので、その際にもう一度ご意見いただければありがたいです。

  •   イシダ
  • 2005年08月28日 22:07

けっきょく法規範というのはどういう意味なんですか?基礎法というのも字面どおりの意味ですか?自由の基礎法というのと違いは無いのですか?やっぱり法は最初に言葉の意味を知っていないと簡単な説明ですら難しいのですねえ。ドイツには憲法遵守義務が国民にも課せられているとむかし高校か何かで習った気がしますがあれは憲法が権力の暴走から国民を守るということに矛盾しないのですか?いやー勉強が足りないというか私のオツムがたりないですなあ。

・・・公民の教科書何処にしまったかなあorz.

  •   
  • 2005年08月25日 13:03

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