ノラ猫と所有権
20051017-16:49 コメント (6) トラックバック (1)
イシダんちの敷地内にノラ一家が住み着いているということはこれまでも何度かお話してきました。ブサイクな母猫+第1弾の子猫達3匹がいましたが、うち1匹の黒縞模様のオス猫は巣立ったのか何なのか居なくなり、現在は白いオス猫(目つき悪い)と斑模様のメス猫(不幸そうな顔)が母猫と3匹でウロチョロしています。
第1弾の子猫達は人間に慣れないまま成長してしまったので、人間を恐がってなかなか触らせてくれません。母猫に至っては人間を敵視すること甚だしく、背中を触ろうとすると引っかいたりしてきます。こんなアホ達は放っておけばいいのに、イシダのおかんは「こいつ等はもうウチの猫なんだから」とかエサをやったりウンコの処理したりと大頑張り。まあ御近所さんの庭を荒らしたりしない(というか出不精?)な連中なので、これはこれでいいんですけど。
だからといってこれ以上繁殖されても困るので母猫(ブサイク)をとっ捕まえて避妊手術をしようってことになっているため、近いうちにノラとのガチバトルが予想されます。それに先立ち母猫の寝床に第2弾の子猫が生産されていたりするとアレなので頑張ってガサ入れした結果、白いメスの赤ちゃん猫を発見し現行犯逮捕…ここまでは先日書きましたね。書いたっけ?ラジオでお話したんだっけ?記憶があやふやですがまあいいや。
今日はふと「こいつ等ってもうノラじゃないんじゃないの?」と思ったのでそれについて書きます。
民法239条
1項
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
誰の持ち物でもない動産は、「所有の意思をもって占有」すればその人の所有物になるとあります。よくある具体例としては、川で魚を釣った場合なんかですね。ノラの魚を釣った釣り人は、当然「この魚は俺の物だ」と考えるでしょう(注:漁をする権利について定めがある場合は別ですけど)。
ここで「占有」という言葉が出てきました。これは「自分のために利用する意思を持って」「その物を事実上支配していると認められる状態にあること」を指します。例えば図書館から本を借りてきた場合、その本の所有権は図書館にありますが、借りてきた人はその本を占有していることになります。
以上を踏まえて条文を読むと、所有者のない動産(以下、無主物と言います)については、A:自分の物にしようという意思で、B:自分のために利用する意思を持って、C:その物を事実上支配していると認められる状態…におけばその瞬間にその人の物になるって書いてあることになりますね。
これをイシダのおかんがやってる行為に当てはめてみると、A:「こいつ等はもうウチの猫」ってことで世話をしているので自分の物にしようという意思OK、B:可愛がったり癒されたり話し掛けたりと利用しているので自分のために利用する意思OK、C:ノラ達はイシダん家の敷地から出ずメシの時間には定期的に集まりいつでもとっ捕まえられる状態にあるので事実上支配していると認められる状態OK。
実はこの猫達はとっくにイシダのおかんの所有物になっていて、ノラなんかじゃなかったんだYO!でもここで所有権が明らかになったのは母猫+第1弾の子猫3匹です(このうち居なくなった黒縞模様については所有権放棄ってことにしよう)。じゃあ第2弾の白い赤ちゃん猫についてはどうなるのか。
民法88条
1項
物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
民法89条
1項
天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
果実というと一般的には果物が連想されますが、法律上は果物以外にも動物の子供や農作物、炭鉱から採れる鉱物も含みます。母猫を所有するイシダのおかんは果実を収取する権利を有していますので、第2弾の白いメス猫はもとより今後出てくるかもしれない第3弾第4弾の子猫の所有権をもゲット。大変だ。早いとこ避妊手術せな。
尚、上の方にある画像をクリックすると動画が見られます。目脂も無くなってきたしノミの駆除も終わったし、あとはイシダ家に8年以上いる家猫のはなちゃんと仲良くできるかどうかがカギだな、この赤ちゃん猫は。今現在イシダの隣の物置部屋で大暴れして五月蝿いので、はやく家猫スペースに行って欲しい説。
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いや、これは択一でもCランク扱いのマニアック規定なので常識ではないですね。イシダはいま居る家猫ハナちゃんの所有権を考えた際にこの条文を引いていたので今回も思いついただけです。
新エントリーまで立てて解説していただいて恐縮です。
>家畜外動物の原始取得(195)
こんな規定が独立して存在してるんですね。コメント書いた後で「無過失で善意取得」で突っ走るのかなとか思ったのですが。
この規定、司法試験受験生の間では、常識なのですか?
どっちかと言うと、設例1では即時取得と遺失物の特則(192、193)又は家畜外動物の原始取得(195)と売買、設例2では一般不法行為(709)か動物占有者責任(718)、所有権放棄とその濫用が話題になってくるのであって、飼い主が占有を失ったという事実から何らかの法的効果が発生するわけでは無いと思いますYO。
でも面白そうな事例なのでこれはラジオでお話します。
設例1
逃げた子猫が後日第三者に拾われ、しかも実は血統が良かったために高価で取引された場合、逃がした元の持主はその本来の所有権を根拠として対価ないし当該子猫の引渡を請求できるか?
設例2
かつて所有していて、現在は逃亡のため占有を離脱しノラ化した猫が、第三者の盆栽を破損した場合、当該盆栽の所有者は、猫の元の所有者から損害賠償を請求できるか。
今度ラジオで猫ネタをやるときにでも触れてもらえれば嬉しいです。
>占有離脱の法的効果
スンマセン、刑法の占有離脱物横領罪絡みのことしか思いつきません…。
>(このうち居なくなった黒縞模様については所有権放棄ってことにしよう)
折角ここまで書いたのですから、この際占有離脱の法的効果もやりませんか? 試験には出そうもありませんが。