時効取得と登記に関する新判例
20060210-21:12 コメント (2) トラックバックする
新判例っていうか1月17日の判例ですから、1ヶ月近くノーチェックだったイシダもどうかと思うんですけど。最判平18.1.17「要旨:不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合」
民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意・悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきである。
背信的悪意者排除論ですね。ここは別に普通です。
そして,甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというべきである。
うーん凄いぞ。この論点って教科書や参考書だと、時効取得者と不動産の譲受人との関係が前主後主の関係に類似するか二重譲渡関係に類似するかによって判断するっていう結論ですけども、二重譲渡関係に類似する場合は登記の先後で決めるってところでお話が終わっちゃってますよね。
これからは更にそこから背信的悪意者排除論までお話が進んでいくことになるんでしょうね。ちなみに何について悪意であれば背信的悪意者とされるかについては、
取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。
だそうな。直近の試験にはあんまり関わってこないでしょうけど、実務では大活躍することになる判例かもしれません。
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この判例っぽいことを解答させようとする問題ならば、これ見よがしに「不動産の譲受人は、時効取得者が長期に渡って占有していることを知ってた!知ってたんだよ!」って問題文に書いてきそうですよね。
知らなきゃ知らないなりに現場思考で書けばそれなりの点数は取れると思いますYO!某所の直前答練なんかは出題しそうですね。
この判例、どこぞの予備校なら嬉しがって今年の答練か模試で出しそうですな。
まぁ、判例の存在を知らなければ
取得時効完成後の第三者だから登記で決着→先に登記を得たヤツが背信的悪意者→背信的悪意者は登記があっても対抗できない→そいつの負け
…と現場でなら考えそうですが…。